お兄ちゃんとケンカになると、顔を真っ赤にして、もう手がつけられないほどギャン泣きしてしまう次男、5歳。
ちょっと前までは、
さあ、お母さんの胸に飛び込みなさい~と
聖母(マドンナ)たちのララバイを口ずさみながら両手を広げるだけで、
「あーん、ママ~」と泣きながら寄ってきて、
抱っこしてあげたら泣き止ませることができていたのですが、最近は。
泣いてる時に母が手を広げただけで、激しく拒否反応。
このオレを子供扱いするなど、言語道断!っと言わんばかりに、
さらに大声で叫んで怒るように、
「やめてよ!あっち行ってよ!うおーん(泣)」
正直、どうしたものかなーと悩んでいたところ。
何日か前、寝かしつける時に、
「ママー、もっとこっちにきてよー」と
甘えモードだったので、
この悩みを本人にぶつけることにしてみました。
本人の気持ちは本人が一番よくわかっているはず。
赤ちゃんではなく、もう喋れるのだから、
ここは次男という師匠に弟子入りして、
ご本人の口から教えを請おうと思ったわけです。
「ねぇ、お兄ちゃんに泣かされて怒ってる時は、
ママはどうしたらいいのかな?
ママにどうしてほしいの?
わからなくて困ってるんだけど、教えてくれない?」
・・・・・
しばらく無言で考えたあと、口を開く師匠。
「あのね、泣いてる子にはね、ティッシュで涙を拭いてあげるの。」
ふむふむ、なるほど。
まず涙を拭いてほしかったのか、と。
母さん手順を間違えてたのね。
いきなり岩崎宏美で抱きしめにいっちゃダメなのね。
涙を拭いてからね。
「それから、頭をね、いい子いい子してあげるんだよ。」
ほうほう、頭をね。
じゃあ、涙を拭いてから頭を撫でてあげると。
「それからね、何か面白いことやって笑わせて。」
…
…
…は?
「だからね、泣いてる子が泣くのやめて、笑っちゃうようなことやって。」
ま、まじすか。師匠。
いま、急にハードル上げませんでしたか?
さっき弟子入りしたばっかりで、
まだペーペーなんですけども、自分。
道端で会った人にいきなり、おもしろいことやって、と無茶振りされるお笑い芸人の心境が今ならわかる気が。
「…あ、あのー、笑っちゃうような面白いことって例えばどんな感じですかねー。」
これもご本人に聞いてみる。
「えーママ、そんなこともわかんないの?」
「すいません。師匠。」
「アパーとかだよ。」
「ア、アパー?」
「そう、アパーって。」
「あ、オードリー春日のアレですか。」
「違うよ、こうだよ。」
と言いながら師匠が見せたのは、
仰向けに寝転がって
アパーと言いながら、
手と足をパカっと広げる動作。
ちょっと待ってね、下手で申し訳ないけど
絵にするとこんな感じ…
…
…
…おい、息子よ。
それのどこがおもしろいのか。
という言葉をぐっと飲み込み、
「こ、こうですか。師匠?」
アパー…
「違うよ、もっとこう、アパー!って。」
「え、どこが違うの。わかんないな。」
アパー?
「そうじゃないよ、アパーだよ!」
とにかくアパーという謎のギャグを体得しないことには、
今夜は寝かせてもらえない。
灰皿を投げつける蜷川幸雄ばりの演技指導の下、
間抜けな格好のギャグを何十回とやらされて、
「まぁ、そんなもんかな」とアパー師匠のお墨付きをもらい、
その日は眠りにつきました。
その翌日、
早速、その方法を試すチャンスは
やってきました。
ご飯を食べた後、
これと言った理由がないのに
なんだか急に機嫌が悪くなり、
自分から布団に寝転がって、
うーうーと唸っている師匠。
母はピーンときましたよ!
これは、あの特訓の成果を試す時だなと。
もしかして師匠は、
あえて自分に実践の場を提供してくれているのではないかと。
よーし、まずは教わったとおりに、
ティッシュでやさしく涙を拭いt…あ、出てないか。
(そうだ、師匠は本当に泣きたいわけではなく、
自分を試すために機嫌の悪いフリをしてくださってるだけなんだ)
えっと、次なんだっけ、
あ、いい子いい子だ。
と、頭を撫でようと手を伸ばす私。
しかしその手を払いのけ、まだ怒って泣き叫ぶ師匠。
(す、すごい。師匠、迫真の演技ですね)
…
…わかりました。
とうとうこの時が来たのですね。
ここはやはり、あのギャグの出番なんですね、師匠!
師匠も本気でぶつかってくださってるんだ、自分も本気でいきます!
見ててください、師匠!
つってね、やってやりましたよ。
師匠の目の前で、
渾身の、最大限のやつを。
はい、アパー!
どうですか、師匠、今自分にできる、
ベストオブベスト、アパーオブアパーですよ。
見ててくれましたか。
笑ってくれますか。
師匠、ししょ…
「うぎゃー(怒)!」
(ドスッ)
怒り狂った師匠の
かかと落としが
無防備な私のわき腹を直撃。
悶絶する私。
なおも叫び続ける師匠。
し、師匠、話が違う…。
※師匠は、ほんとに眠くて機嫌が悪いだけでした。
教訓:荒れてる5歳児には手を出すな!
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