少し前の話なのですが、息子の小学校で、美術展がありました。
体育館や廊下を使ってたくさんの作品が展示されていて、とても面白かったです。
子どもたちの絵や作品を見ながら、あることを思い出しました。
ほわんほわんほわんほわわわわわーん(回想シーン始まる音)
天狗の描いた絵
私は小さい時から、手先が器用な子どもでした。
お気に入りの番組は、のっぽさんとゴン太くんの「できるかな」。
「さてさてほほーん♪」と鼻歌を歌いながら、暇さえあればよく絵を描いていました。
学校での図画工作も、とても得意でした。
まあ、勉強全般が好きだったので、トータルとして優等生だった私。
小学校中学年の時点で、クラスメイトからも先生からも、「あの子はなんでもできる子」という評価をほしいままにしていました。
ええ、そうです。
今なら言い切れます。
天狗だったんです。
すみませんね。
そしてある時、小学校を転校することになります。
誰も知り合いのいない、文化のあまりに違う小学校に転校してきたばかりの天狗は、気負っていました。
とにかく、周囲の人間になめられたくなかった。
勉強も誰にも負けたくなかったし、それは体育や音楽や図工においても同じでした。
消防車が校庭にでーんと駐車された「春の写生会」でも、誰よりも気合が入っていたのではないかと思います。
「すげぇうまい絵を描いて、みんなをびっくりさせてやる」
その狙い通り、私の絵はクラスでも学年でも
「一番うまいね」
と言われ、金賞みたいなシールが名前の横に貼られ、区役所のロビーかなんかに学校代表として貼り出されることになります。
私の絵は、いかにも優等生の描きそうな、褒められポイントを押さえた、「きれいな」絵でした。
モチーフである消防車全体を斜め前からとらえて、形をしっかりととり、バランスよく紙の上に配置。
ホースなどのディテールも気を抜きません。
陰影もしっかりとつけて、立体感のある仕上がり。
背景の校庭の遊具や並木も精緻に表現。
色鮮やかな絵の具を使って、明るく、清く、正しく、子どもらしく。
学校内で褒められることも、選出されることも、ここまでは想定通り。
なんてったってほら、天狗だから。
すんごい奴がいた
そんな鼻持ちならない天狗の横で、実はもう一人、同じ学校代表として選出された子がいました。
同じクラスのMくんです。
このMくんというのがですね。
んー、今でいうと多分、特別支援的なクラスに通うかどうか、というボーダー上にいるような子だったと思います。
マイペースで気分屋。
かろうじて授業中、歩き回ったりはしていなかったけど、好きなこと、興味のあることしかしない。
なので国語と算数の授業では、基本、寝ています。
毎日忘れ物が多いのは当たり前で、宿題とかもやってこないのが平常運転。
まぁ、そんなタイプ。
でね、そのMくんの描いた絵というのが、とにかくすごかった。
天才の描いた絵
真っ黒な絵だったんです。
ところどころにグレーと、赤い絵の具が少々と言う感じの、とにかく迫力満点のどす黒い絵でした。
彼は消防車を描け、と言われて、その消防車の前輪のタイヤだけにフォーカスし、それをものすごいエネルギーで描ききったのです。
言われないと消防車の絵かどうかすらわからない。
でもそんなことは関係ない。
彼の目はタイヤに止まり、その一点に集中して、画用紙からはみ出すほどに表現した。
形が崩れていて歪んだタイヤなのに、明らかに彼の絵の方が、力強く、見る者を引きつけます。
圧巻です。
芸術が、爆発です。
普段から、他の教科は一切やる気がないのに、図工だけは目を輝かせて取り組んでいたMくん。
天才っていうのは、日常生活とか一般常識がアレな人が多いというイメージがありましたが、おそらく彼も、そういうタイプの人だったんじゃないかと思います。
その時の私ですか。
美内すずえ先生の「ガラスの仮面」よろしく、白目むきながら「恐ろしい子!」って。
そんな感じです。
うまい下手でいったら、私の方がうまい絵なんですけど。
うまい絵なんていらないんすよ。
写実的に描くんだったら、写真でも撮っとけって話でね。
ああ、天才っているんだな。
かなわないな。
そう思いました。
身の程というものを知りましたので、今思うと、天狗の鼻があの時ポッキリ折られておいて、よかったと思います。
才能をつぶさない大人に
いや、でもさ、大人になった今、振り返るとですよ。
すごいのは、画用紙を一心不乱に真っ黒に塗りつぶすMくんを、黙って見守った図工の先生と、これを学校代表に選んだ大人たちだったなと。
この常識破りで規格外の真っ黒いタイヤの絵を、「消防車」というタイトルのもとに選んで、学校の代表にした。
そのセンスというか、覚悟というか。
あっぱれだったなと思うのです。
今ごろどうしてるだろ、Mくんは。
中学まで同じだったけど、高校進学してからは会えていません。
同窓会にも来てなかったなぁ。
今も、絵を描き続けているかなぁ。
ああいう才能は、周りの人間に相当の理解がないと、世の中生きづらいと思うんです。
私だったら、どうするでしょう。
たとえば息子が、彼のような独特の視点で、他の子とは違う絵を描き始めたら。
不安になってしまうかな。
止めようとするかな。
「この子、大丈夫かしら」と心配するかな。
一部分しか見てなかったら、
「ほら、あの子みたいに、もっと全体を見て描きなさい」
とか、余計なことを言ってしまうかな。
Mくんの親御さんは、彼をどう育てたかな。
どうか、どうか、彼の自由な才能がつぶされていませんように、と願わずにはいられません。
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