隣の課とは仕切りがありません。
ということは、隣の課の方たちが話している声が聞こえてきます。
別に、聞こうとしなくても耳に入ってくるので仕方ない、とはいえ。
仕事はできる方なのでしょうが
隣の課にいる40代の女性。
その方の言葉づかいが気になってしまうことがあります。
見た目、普通の日本人女性なんですよ。
小さいころから親の転勤などで海外在住だったらしく、英語とスペイン語が堪能で。
電話で海外の方と早口でやりあっている声がよく聞こえてくるので、まぁ、有能で強い女性であることは間違いないと思います。
そんな彼女が時折、口にする日本語が、
ざっけんなよ、おせーよ、しらねぇよ
びっくりするぐらい汚い時がある。
それじゃ台無しだよ
たまに、ですよ。
それも職場の同僚に対して、面と向かって言うとかじゃなくて。
いや、そもそもそんなブラックな職場は嫌ですし。
その場にいない誰かに対する、愚痴とかツッコミに近い感じ。
だから職場の空気が悪くなるわけではないのですが、私は気になるんですよね。
いや、思いますよ、私だって。
仕事の中でたまに発生するトラブル、遅延、面倒なこと、困ったちゃん、などなどに、毒づいてますよ。
「ざけんなよ、おせーよ、しらねぇよ」と心の中では。
でもそれを職場で口に出して言おうとは思いません。
それは…大人だから?
どうしても誰かに聞いてほしいときは、同僚に「そんなん知るわけあるかーい!って感じですよねー」とか面白おかしくしようと気を遣います。
たとえ愚痴に近いようなツッコミだとしても、そういう言葉を吐き捨てるように口に出して、他人の耳を汚すのは、ちょっと社会人として違うと思っちゃうから。
彼女がどんなに語学が堪能だろうと、ネイティブと互角にやりあおうと、その言葉を言っちゃう時点で、日本語の品位としてはうちの小5男子とそんなに変わらないんだよなぁ…。
バイリンガルを羨んでいる人がハマりがちな落とし穴
英語を勉強してきた中で、
「いいよなー、親の仕事とかで小っちゃい時からアメリカとか行ける子は」
と思っていた時期があります。
ええ、私自身、今も苦労してるのでね。
本人たちにもそれなりに苦労はあったと推察しますが、それでも、言葉の壁をいとも簡単に超えてしまうバイリンガル・マルチリンガルの人は見ていてうらやましい。
その華麗なるペラペーラな姿を見ていて、子供の将来とか考えるとね、これはもう、仕方ない。
教育熱心な親御さんで、日本語もおぼつかない時期から高い教材を買ったり、インターナショナルなプリスクールに入れたりする人たちが出てくるのは当然のこと。
ただ、ちょっと気を付けなければいけないようです。
外国語を習わせるより重視すべきは母語
言葉の専門家がよく言うのは、母語をきちんと育てることは、子どもの外国語学習においても重要だということ。
先日記事を読んだのですが、ある言語学者は、複数の言語を高いレベルで使いこなせるバイリンガル・マルチリンガルになれるかどうかは、母語の力で決まるといっても過言ではない、といっていました。
母語がしっかりと根付いて、はじめて外国語の力も伸ばすことができるとのこと。
言葉を受け取った人がどう思うか、TPOに応じた使い分けができるか、というのは、高度なレベルでその言葉を使いこなせないとわからないと思うんですよ。
文法的にも文脈的にも間違ってないけど、なんかちょっと気になる言葉の使い方とか。
隣の課の女性も、もしかしたら日本語のほうが母語ではないのかもしれませんが、せっかくマルチリンガルで仕事ができるのに、たまに発する品位のない日本語の言葉遣いのせいで、「惜しい」んです。
もったいないんです。
先ほどの言語学者は、親の海外駐在に随伴してきた日本人の子どもについてこんなことを言っています。
現地校やインターナショナルスクールに編入した日本人のお子さんの、英語(または現地の言葉)がその後どれぐらい伸びるかは、編入してきた初日にある程度分かってしまうのだそう。
編入後の外国語の伸びは、すでに日本で身につけてきた日本語の国語力と、比例するのだそうです。
母語、侮るべからず。
同時に、海外に渡れば必然的に質の高い外国語が操れるようになる!と思いがちですが、本当に高いレベルで達成するなら、家庭での母語サポートも重要なのだそうです。
たとえば家族と日本語で、話題になったニュースのディスカッションをしたり。
少し読みごたえのある、日本語で書かれた小説を読ませたり。
高い教育費をかけて英語の早期教育に躍起になるのもいいですが、そういう一見地味な、でも日本にいてもわが子に対してできる、母語である日本語を伸ばす手助けをしてあげること。
それが、いざ、子どもが本格的に外国語を学び始めたときに効果を発揮して、高いレベルでの言語習得を可能にするのかもしれません。
子どもの教育を考えるときに、注意しなければいけないポイントだと思うのです。
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